象小屋跡
歴史散歩マイスター
2021/11/24
東京メトロ中野坂上駅から徒歩7分ほどのところに朝日が丘公園があります。 江戸時代,このあたりに象小屋がありました。『江戸名所図会』には「中野に象厩(きさや)を立ててそれを飼おせられし」と記されています。 この象は,8代将軍徳川吉宗の求めにより,1728(享保13)年に中国商人が安南(現在のベトナム)から連れてきたものでした。長崎に着いたときにはオス・メスの2頭でしたが,メスは死んでしまい,オスだけが陸路,京都を経て江戸までやって来ました。 京都では,中御門(なかみかど)天皇の謁見を受け「広南従四位白象」という位までもらったといいます。江戸では,吉宗が上覧したあと浜御殿(現在の浜離宮恩賜公園)で10年余り飼育されていましたが,その後中野村の源助という農民に下げ渡され,この象小屋で飼われたということです。 当時,象はとても珍しく,多くの見物人がここを訪れ,象にちなんだ物品もいろいろとつくられました。 象は1742(寛保2)年に病死し,皮は幕府に献上され,牙や骨は宝仙寺(中野区中央2-33-3)に納められ供養されましたが,1945(昭和20)年の戦火で一部を残し焼失してしまいました。
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